「サピックスに通うのが楽しい」と言ってくれる子どもたちに、私たちは何を伝えてあげられるのか、そのことだけを懸命に考え、そのことのためだけに教材や指導システムを作り上げてきました。何よりも講師と子どもたちがふれあう授業を大切にし、保護者の皆様の不安や心配をとりのぞくために、さまざまな機会にコミュニケーションがとれるように配慮しています。合格実績はあくまでも結果ですが、子どもたち、保護者、そして講師が、その結果に誇りを持てるようにしたいと願っています。
サピックスでは子どもたちが自ら関心を持って考え、学んだことがきちんと身につくようにするために、授業から教材まで「復習中心の学習法」に基づいて構成しています。子どもたちには、塾の授業に予習をすることなく臨み、その場でその日の課題に取り組んでもらいます。そして家庭では、塾で学習した内容の復習を中心に進めてもらいます。塾と家庭での学習を復習主体に組み立てて、全体として学習の定着度を高めていこうというのです。
では、実際にはどのように『復習中心の学習法』が実践されているのでしょうか。
まず、サピックスではその日に使う教材はその日の授業で渡します。子どもたちは予習をしてくる必要はありません。入試がそうであるように、テキストの内容は子どもたちにとっては初めて出合うものです。「今日はどんなことを勉強するのかな?」という子どもたちの知的好奇心をかき立て、授業に集中させます。
授業では板書を媒介にして子どもたち自身が問題に取り組み、講師が解説します(『黒板授業』『討論式授業』はサピックスの指導法の大きな特色です)。そして授業終了時には、その日に学んだ内容を家庭で復習できるように「復習教材」を渡します。教材には授業での学習内容が自然に身につくように、易しい問題から難しい問題、発展問題、類似問題など難易度や問題の質を考慮した課題が盛り込まれています。
授業中は講師の誘導によって簡単に解けた問題でも、一人で問題に向き合ったときに、はたと解けなくなることがあります。授業で学んだことを一人で考え直したり確かめたりする時間は、学力の定着に必要不可欠であり、塾での学習と家庭学習は、車の両輪のようなものなのです。サピックスは、家庭での自学自習が塾での学習と同じように重要だと考えています。
家庭で復習したことは次週の授業の「小テスト」で定着度を確認し、つまずきやすいところをもう一度わかりやすく解説していきます。また、教科によっては一つの単元を3~5週間にわたって、繰り返し学習していくことになります。
年間のカリキュラムにも「復習中心の学習法」は活かされています。一つの単元は、同じ学年でも何度か平常授業や講習において取り上げられるようになっています。また、学年が上がっても同じ分野は難易度が少し高くなった形で繰り返し学習できるようになっています。まさに、らせん階段を少しずつ上がっていくように、子どもたちはレベルアップを図ることができるのです。受験で扱われやすい分野は特に入念に繰り返され、基本から応用、そして入試で必要な実戦力まで身につくように配慮されているのです。
子どもたちは学ぶことがおもしろくなければ自ら学ぼうとはしないものです。一つのことに熱中し、とことん考えぬいた「充足感」、問題を解くことができた「達成感」、自分自身がひと回り大きくなったような「成長感」といった三つの『学ぶ喜び』が子どもたちの中に自然とわき起こるからこそ、それがさらなる学習へとつながっていくのです。
サピックスでは、子どもたちが三つの『学びの喜び』を感じられるように、黒板授業、教材、テスト、あるいは学力別クラス編成などの指導システムを作り上げています。特に授業では、講師が投げかけた問題を子どもたち自身の「目標」としてまずしっかりと認識させ、自分の頭で思いきり考えてから解答を発表させ、さらにそれを講師が前向きに評価してできるだけほめるように努めています。ときには生徒たち全員が歓声をあげ、拍手を送ることもあります。一つひとつの問題や課題をクリアしていく中で子どもたちは自分自身の「成長」を実感することができるのです。
受験を乗りきるために最も必要なのは、子どもたち自身の能動的な姿勢です。それは親や講師が押しつけるものではなく、導くもの、気づかせて自ら感じさせるものです。親や講師が、“目標を与え、表現させ、認める”といった子どもとのコミュニケーションを日常的に上手にとれていれば、子どもたちはきっと意欲を高め、適切な学習によって順調に学力を伸ばしていくことでしょう。
受験を終え、志望校合格という大きな目標を達成した保護者の皆さまがよく口にされるのが、親でも気づかなかった子どもの潜在能力の大きさへの驚きです。私たちは子どもたちの能動的な姿勢から生まれる無限大の可能性を信じています。
現在の中学入試では、『思考力』『記述力』を問う出題が主流です。繰り返し試行錯誤する中から規則性を見つけたり、図や表から類推させたり、仮説から結果を導いたりする問題。あるいは複数の分野の関連性を扱ったり、縦割りで学習されがちな分野を横のつながりで考えさせたりするものもあります。さらには登場人物の気持ちになることが必要だったり、日常的な問題についての考えを問われたりといったように、単に知識の量を問う問題ではありません。これは学校側が、その子どもが今までどんな生活を送ってきたのかや、将来どれだけ伸びていく素質があるのかということを見たいと考えているからなのです。
したがって、詰め込まれた知識を答案用紙にただ書き出すだけの単純な作業では、とても合格を勝ち取ることはできません。とりわけ、難関中学の出題では、選択肢の問題や単純な計算問題、知識だけを問うような問題は少なく、内容の深い長文を読ませ、あるいは実験観察を取り上げ、答えだけではなく解法の過程や考え方を評価する問題が多くなっているのです。そこでは考える力、自分の言葉で表現する力がたいへん重要になってきます。
ところが、『自分の頭で考え、自分の言葉で表現する』ということは、決して簡単なことではありませんし、短期間に身につくというものでもありません。これまでに学んだ知識を系統立てて関連づけることができ、さらに適切な言葉で表現する能力が身についていなければなりません。何より実際の入試では、出題者の意図に適切に答えることが要求されます。
そこで、サピックスでは、授業、特別講習、教材、各種のテストを通して、『思考力』『記述力』をふだんからじっくりと養成することに主眼を置いています。授業は黒板を媒介にして、講師と生徒が討論をしながら、じっくり時間をかけて、いくつもの解法をさぐり出していくというスタイル(『黒板授業』『討論式授業』)ですから、初めて出合う問題に自分の「頭と鉛筆」だけで、試行錯誤しながら一生懸命知恵をしぼっていかなければなりません。そうして自然と考える力を身につけていくのです。考える力を引き出し、能動的に発言させることを大切にしているため、子どもたちに与える題材も思考力を活性化させるような内容のある、質の高いものばかりを選んでいます。また、常に自分の意見をはっきりと伝えることの大切さを教え、特に国語においては、「書くこと」を中心に授業を進め、国語が苦手な子どもでも「書くこと」に抵抗感を感じさせないようにしています。さらに、授業や講習と並行して行われる『サピックスてんさく教室』という記述添削指導によって、子どもたちは「記述表現力」を着実に身につけていくことができます。
自分で考え、解決方法を見つけていく。一つの発想だけでなく、いろいろなものの見方がある。そんな子どもたちの可能性と学ぶ喜びを引き出していくのが、サピックスの指導法の大きな特色である『黒板授業』です。
サピックスの授業は、講師が黒板に問題やテーマなどを板書し、それを生徒たちがテキストやノートに書き写すことから始まります。そして自分なりの考えで解答を書かせ、生徒の考え方や解き方について講師が解説します。手を動かし、講師の板書を見ながら自分なりに要点をまとめることは、さまざまな意味で子どもの能力を高める効果があります。また黒板を媒介として生徒と講師とがコミュニケーションをとることで、生徒たちは一方通行ではない楽しい授業と感じ、積極的に授業に参加できるようになります。
まさにサピックスの授業は、子どもたちの頭の中にある潜在的な能力を引き出す「宝探し」のようなものだといえるでしょう。
どんな教科でも、一つの問題に対する解法は一つだけとは限りません。いろいろな解法を学ぶことで、問題の構造や意図が明らかになってくるのです。そのため、サピックスの授業では、あらかじめ講師が用意した模範解答だけを単に押しつけて一方的に解説するのではなく、子どもたちが解いた他の解法も積極的に発表させ、それについて活発に討論させるような、子どもたちと講師の『討論式授業』を大切にしています。良い授業というのは、講師からの「なぜ、そういう結果になるのか」「なぜ、主人公はそう思ったのか」などという「発問」のある授業です。その「発問」に子どもたちが答えていけるよう、しっかりと導いてあげることが必要です。講師の「なぜ?」に、子どもたちが自ら考え、言葉で表現し、一つひとつをクリアしてたどる小さな道筋は、知らず知らずのうちに網目のようにつながっていき、子どもたちの能力は際限なく広がり、結果的には中学受験での合格にたどり着くことができるのです。